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発癌物質経口投与ネズミの臓器アスパラギナーゼについて
春野 勝彦
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1954 年 45 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

バターエロー (DAB) およびアセチールアミノフルオレン (AAF) をそれぞれ経口投与した鼠の肝およびその他の臓器のアスパラギナーゼ (asp) の活性度を検討した。DAB投与鼠の肝aspの活性度に関する既報の事実を再確認し, さらにAAF投与鼠についても全く同様な結果を得た。すなわちAAF投与の初期実験において鼠肝のasp活性度は正常動物にくらべて顕著に下り, 約4週で最低値に達する。
AAFを長期投与し測定の直前までつづけた鼠の肝ではasp活性度は極わめて低い。この時期の肝は病変肝である。長期投与の後, AAF食を中絶し正常食にもどして飼育した鼠の肝のasp活性度は正常値に近づいている。すでに肝癌になつた部の活性度には回復現象はない。
Millerらの提唱するアゾ色素投与により肝蛋白結合アゾ色素が生じ肝の蛋白 (酵素) の変性を来すという説に思いあたる。AAF投与の場合も全く同様にAAFが肝酵素に結合し変性をおこすものと想像する。この現われの一つとして著者のみた如く肝aspの活性度がAAF投与で低下したものと思う。
肝以外の臓器, 脳, 腎等でaspの活性度を測定したが正常との差異は論ずることができなかつた。すはわち多発性の発癌物質といわれるAAFと癌を特異的に肝に好発させるDABを用いた場合との差は結局認められなかつた。

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