Print ISSN : 0016-450X
薬品の白鼠肉腫に及ぼす細胞学的影響, 第III報
田中 達也加納 恭子外村 晶岡田 正梅谷 実
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1955 年 46 巻 1 号 p. 15-26_1

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抄録

牧野•田中 (1953) はポドフィリンがMTK-肉腫, ならびに吉田肉腫に対して顕著な制癌作用を有することを明かにした。われわれはポドフィリンより分離精製されたポドフィロトキシン, アルファ•ペルタチン, ベータ•ペルタチン, クエルセチンの4種の試薬比ついてMTK-肉腫におよぼす影響を細胞学的に観察した。腫瘍移植4~6日目のラッテの腹腔内にそれぞれの薬品の適当量を注射すると, 薬品の種類によって若干の程度の差異は認められるが, いずれの場合にも腫瘍細胞の多数に崩壊が起り, 腫瘍の増殖は一時抑制される。その細胞学的作用はポドフィリンのそれに類似したもので, 中期細胞の著しい分裂抑制がみられると同時に休止細胞に対する影響も観察された。しかしながら, 薬品の影響をうけることなく生きのびる一群の腫瘍細胞が存在していて, それらが再び増殖して腫瘍再成の源となる。実験においては, 肉腫の成長の完全な退行は一例も観察されなかったが, 僅かながら生存期間の延長をもたらした。
すなわち, 腫瘍細胞におよぼす影響はいずれの薬品もポドフィリンにはおよばないが, 4種の中ではポドフィロトキシンが最も強烈であり, ついでベータ•ペルタチン, アルファ•ペルタチン, クエルセチンの順に作用の度合が減少した。

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