Print ISSN : 0016-450X
白鼠の腫瘍及び正常細胞の染色体に関する研究•遺伝糸説の提唱
臼淵 勇小関 哲夫
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1956 年 47 巻 1 号 p. 1-14_5

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抄録

1) 白鼠の腹水肉腫である弘前肉腫及び臼淵肉腫の染色体には吉田肉腫と同様に, 一定の数と形を見出すことはできなかった。弘前肉腫においては一般の diploid 型から累代中に tetraploid 型が主体の新しい系統を生じた。また臼淵肉腫では当初は diploid 型と tetraplaid 型が略均等にみられたが, 累代につれて tetraploid 型が増加し, ほとんどが tetraploid 型と変った。
2) 白鼠の体細胞である淋巴芽球, 大食細胞及び睾丸性細胞の何れの染色体においても一定の数と形を見出すことはできなかった。淋巴芽球は diploid 型であり, 大食細胞は主として diploid 型で, 一部は tetraploid 型であり, 睾丸性細胞は haploid 型及び diploid 型が主体で, 一部に tetraploid 型をも認めた。
3) 父性または母性の不可欠の遺伝因子の組合せを遺伝糸 genoneme とし, 染色体は相同の父性及び母性の遺伝糸が結合して成立するもので全体として1本の長い糸状のものであって, これが自由に切断されて染色体の数と形が変化しても遺伝因子に変化はおきないという仮説を提唱した。

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