Print ISSN : 0016-450X
47 巻, 1 号
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  • 臼淵 勇, 小関 哲夫
    1956 年 47 巻 1 号 p. 1-14_5
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    1) 白鼠の腹水肉腫である弘前肉腫及び臼淵肉腫の染色体には吉田肉腫と同様に, 一定の数と形を見出すことはできなかった。弘前肉腫においては一般の diploid 型から累代中に tetraploid 型が主体の新しい系統を生じた。また臼淵肉腫では当初は diploid 型と tetraplaid 型が略均等にみられたが, 累代につれて tetraploid 型が増加し, ほとんどが tetraploid 型と変った。
    2) 白鼠の体細胞である淋巴芽球, 大食細胞及び睾丸性細胞の何れの染色体においても一定の数と形を見出すことはできなかった。淋巴芽球は diploid 型であり, 大食細胞は主として diploid 型で, 一部は tetraploid 型であり, 睾丸性細胞は haploid 型及び diploid 型が主体で, 一部に tetraploid 型をも認めた。
    3) 父性または母性の不可欠の遺伝因子の組合せを遺伝糸 genoneme とし, 染色体は相同の父性及び母性の遺伝糸が結合して成立するもので全体として1本の長い糸状のものであって, これが自由に切断されて染色体の数と形が変化しても遺伝因子に変化はおきないという仮説を提唱した。
  • 渡辺 文友, 外村 晶
    1956 年 47 巻 1 号 p. 15-22_2
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    渡辺(1954)は72°Cの熱水を連続皮下注射したシロネズミのうちの1頭の肝臓に結節状の腫瘍を見出した。この腫瘍の一部は皮下および腹腔内に移植された。その結果,腫瘍は結節性の皮下腫瘍と,腹水性の遊離細胞型としてそれぞれ増殖し,累代移植が成功した。
    原発腫瘍および皮下移植腫瘍の組織学的研究によって,この新腫瘍は肝癌の一種であることが明らかとなり,腹水型の腫瘍を'渡辺腹水癌'と命名した。
    渡辺腹水癌は腫瘍の一般的性状ならびに細胞学的特性において,吉田肉種,MTK肉踵などとは著しく異っている。特に,腫瘍細胞の染色体研究より,現在の所この腫瘍には少くとも2n-,4n-,および6n-型の種族細胞が混在していることが明らかとなった。これら3つの種族細胞はそれぞれ特有の染色体構成を有し,腫瘍の増殖に主要な役割をなしている。
  • 渡辺 文友, 東 緑
    1956 年 47 巻 1 号 p. 23-35_2
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    体細胞に由来する悪性腫瘍が宿主内で独立して生活し, 組織液内に浸潤増殖する一方血行あるいは淋巴道によって転移を起す状況は顕微鏡的単細胞生物の繁殖形式に似ているものといえる。特にマウスやラットの血液あるいは腹水中に瀰蔓性に浮游増殖する白血病あるいは腹水腫瘍の細胞が営む行動は, 生体内における微生物のそれと類似するものがある。かくのごとく腫瘍細胞が単細胞生物のごとく行動し繁殖しているものとするならば, 細菌あるいは原虫のごとき単細胞生物が示す伝染という現象が, 特殊な状況においてはかかる腫瘍の間にも行われ得るものとの想像が許される。すなわち, 生物学的な立ち場から腫瘍をみるときに, 腫瘍がその宿主内において自己の種族を繁殖させるとともに, 何等かの過程によって他の宿主に移行し, そこで増殖して同じ腫瘍を繁殖させる行動が考慮される。
    かかる見解に立って, ウィールスその他の病原体が証明されないところの犬の伝染性外陰部腫瘍をとりあげて, その伝染性の成り立ちにつき細胞学的考擦を試みた。最近長崎地方において観察した13例の犬の伝染性外陰部腫瘍は組織学的にはいづれも円形細胞肉腫に近い像を示していたが, 全例共に外陰部の腫瘍の潰瘍表面に腫瘍細胞を多数含む白濁液が絶えず潴留あるいは滴下していることが特異であった。この一見液状の腫瘍を思はせる分泌液内の腫瘍細胞が, 交尾という機会に際し, 犬に特有な痙攣的且持続的な交尾形式によって恐らく機械的に障害された反対性の性器粘膜下に自然移植され, そこに腫瘍が発生して腫瘍細胞の自然移植が成立するものとの見解に達した。これが確定にはかかる腫瘍細胞を含む分泌液による移植実験が必要であることはいうまでもないが, この液を介して腫瘍が自然移植される過程を腫瘍の液状伝染という言葉で表現した。これは腫瘍細胞が液状腫瘍の形態をとって他の宿主に自然に移行する現象を意味する。犬外陰部腫瘍分泌液による液状伝染が成立するためには分泌液内で多くの腫瘍細胞が健全に生活し, しかも分裂増殖していることが必要条件となってくる。
    最近発見した雌小犬の外陰部腫瘍分泌液内の腫瘍細胞につぎ細胞学的観察を行った結果は, 一定の核学的構成の存在を暗示し, 染色体数54を持つ細胞が高い頻度において出現する。この細胞学的観察の結果は, この犬外陰部腫瘍が交尾という機会において液状伝染の方法によって個体から個体に伝搬されることを有力に示すものである。
  • 大島 福造, 岩瀬 正次, 印牧 富士乃武, 駒田 慶一
    1956 年 47 巻 1 号 p. 37-49_5
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    腫瘍の発生と個体の生活環境殊に自然環境との関係を実験的に追究するために, 4~5ケ月に亘つて高地及び低地でラッテを飼育し, p-dimethylaminoazobenzene を投与し, 両者の癌発生の状態を比較した。この結果高地 (日本アルプス乗鞍岳, 標高約2800m, 1954年8月の平均気圧549.4mmHg, 気温11.4°C, 湿度83.7%) に飼育した動物の肝癌発生は同一条件で低地 (名古屋, 同年同月の平均気圧757.7mmHg, 気温27.2°C, 湿度76.8%) に飼育したそれより抑制されることが明らかになった。すなわち実験動物の肝癌発生率は実験4及び5ケ月において高地群ではそれぞれ44.4%及び55.5%であるに対し, 低地群ではそれぞれ62.5%及び92.9%であった。さらに前癌性の組織変化において両群の間にかなりの差異があり, 高地群では明瞭な輪状肝硬変像を示すこと多く, 低地群では cholangiofibrosis の像強く一般に輪状構造は不明瞭である。又高地群では結節性肥大の細胞の変性像強く, また4ケ月では特異な肝細胞壊死像を多数例に認めた。
    わが教室の多年に亘る地理病理学的研究により, 人間の悪性腫瘍の発生が低湿の地に多く高地に少ない事実が明らかにされたが, 以上の成績は癌の発生並びに発癌過程と個体の生活環境殊に自然環境との間に密接な関係のあり得ることを実験的に明示したものである。
  • 梅田 真男
    1956 年 47 巻 1 号 p. 51-78_3
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    食用色素の問題に関しては現今癌の問題と関連して世界各国において, その重要性の声が高まって来た。現在日本において有毒色素の系列に属するローダミンBはしばしば飴, でんぶ, 紅しようが, 生菓子などの著色に用いられ問題の対称となっている。また化粧品の分野においてはローダミンB, エオシン, エリスロシンなどは, 口紅, 舞台用顔料などに用いられている。
    今回の実験に用いた色素は, (1) Rhodamine B, (2) Rhodamine 6G, (3) Fluorescein Sodium, (4) Eosine yellowish, (5) Rhodamine 3G, (6) Fluorescein, (7) Erythrosine, (8) Violamine R等で, 皮下反復注射の結果, ラッテの皮下に(1)~(4)の場合に, 皮下肉腫を生成せしめた。
    このように食用色素としてしばしば用いられ, また化粧品の色素として用いられている色素が発癌するという事実は, 癌と色素との問題において将来何等かの意義があるのではないかと思われる。
  • 杉村 隆, 小野 哲生
    1956 年 47 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    癌組織ではTTCの還元でコハク酸脱水素酵素を測定すると, 正常に比して非常に値が低くでることから出発し, 鳩胸筋から調製したコハク酸酸化酵素を用いることにより, コハク酸脱水素酵素とTTCの間に介在する未知の助酵素を確認した。これはDPN等既知のものでもなく, また Martin 等によって結核症のモルモット腎でコハク酸脱水素酵素とTTCの間に介在するとのべられた Desaminocoenzyme Aとも異なるものである。
  • 杉村 隆, 梅田 真男, 小野 哲生
    1956 年 47 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    ローダミン肉腫およびm-トルイレンヂアミン肉腫を移植したラットの血液は, 貧血を示すとともに, 血液赤血球の遊離ポルフィリンの増加を認めた。増加の程度は大体正常動物の2倍である。この新事実は癌組織でチトクローム, カタラーゼ等が少いこと, 担癌動物で貧血, 肝カタラーゼ減少が見られること等と関連し, 担癌動物のポルフィリン代謝障害を思わしめるもので興味深い。
  • 水島 昭二, 伊崎 和夫, 高橋 甫, 坂口 謹一郎
    1956 年 47 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    最近, 著者等は新に土壤より分離したアスペルギルス ウストスに属する一菌株より, D-グルタミン酸及びD-アスパラギン酸を酸化するが, 他のDL-アミノ酸を酸化しない酵素の粗抽出液を得た。この酵素標品はD-グルタミン酸及びD-アスパラギン酸を定量的に酸化するので, これらのアミノ酸の定量に用いられる。著者等はこの方法により長い間問題となっていた癌細胞中のD-グルタミン酸の存在について調べたが, 第一表に示す通り, D-グルタミン酸は癌細胞中に特に多く存在するものではなかった。
  • 森 和雄, 一井 昭五, 重田 吉輝
    1956 年 47 巻 1 号 p. 97-103
    発行日: 1956/04/01
    公開日: 2008/11/14
    ジャーナル フリー
    p-Dimethylaminoazobenzene 飼与あるいは腹腔内注射による肝癌生成実験に際して, 巻タバコより得た粗タールを2.5%の割合に飼料に添加すると著しい抑制作用を示した。粗タール中の如何なる物質が抑制的に働くのであるか将来の研究に待ちたい。
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