Print ISSN : 0016-450X
渡辺腹水癌の一般的性状
渡辺 文友外村 晶
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1956 年 47 巻 1 号 p. 15-22_2

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抄録

渡辺(1954)は72°Cの熱水を連続皮下注射したシロネズミのうちの1頭の肝臓に結節状の腫瘍を見出した。この腫瘍の一部は皮下および腹腔内に移植された。その結果,腫瘍は結節性の皮下腫瘍と,腹水性の遊離細胞型としてそれぞれ増殖し,累代移植が成功した。
原発腫瘍および皮下移植腫瘍の組織学的研究によって,この新腫瘍は肝癌の一種であることが明らかとなり,腹水型の腫瘍を'渡辺腹水癌'と命名した。
渡辺腹水癌は腫瘍の一般的性状ならびに細胞学的特性において,吉田肉種,MTK肉踵などとは著しく異っている。特に,腫瘍細胞の染色体研究より,現在の所この腫瘍には少くとも2n-,4n-,および6n-型の種族細胞が混在していることが明らかとなった。これら3つの種族細胞はそれぞれ特有の染色体構成を有し,腫瘍の増殖に主要な役割をなしている。

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