Print ISSN : 0016-450X
癌組織における lipid peroxide の形成と亜鉛
大西 孝之
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1958 年 49 巻 2 号 p. 113-123

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抄録

正常白ネズミの肝臓, 肉腫をもった白ネズミの肝臓, 原発肝癌, 移植肉腫について lipid peroxide の形成能力を比較したところ, 担癌動物の肝臓では lipid peroxide の形成能力がかなり低下しており, さらに癌組織ではほとんど消失してしまっている。このような lipid peroxide の形成は正常肝臓と担癌動物の肝臓ではアスコルビン酸で促進されるが, 癌組織では促進されない。しかしいずれの場合もEDTAによって完全に抑制される。なおEDTAが存在しているとアスコルビン酸を加えてもその促進作用があらわれない。しかしEDTAによる抑制は亜鉛を加えることによって消失してしまうから, 亜鉛は lipid peroxide の形成に重要な役割をはたしているものとおもわれる。コバルト, 銅, マンガン, ニッケル, 鉄にはこのような作用がない。ただEDTAの存在していないときにかぎり, lipid peroxide の形成は鉄によって著しく高められることから, 鉄は未知の因子との協同作用でこのような促進効果をもたらすものと考えられる。

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