2023 年 24 巻 2 号 p. 1-12
自律的キャリア観と転職意向の関係性については,一貫した知見が得られておらず,更なる検討が求められる。本研究では,自律的キャリア観と転職意向の関係において,職場環境がどのような調整効果を持つのかを探索的に検討した。 20~ 50代の就業者6,000人を対象に Webモニター調査を実施し,年齢,性別,自律的キャリア観,転職意向,快適職場観等の独自に設定した指標を含む調査項目について回答を求めた。職場環境の調整効果を検討するため,自律的キャリア観,快適職場観及び双方の交互作用項を独立変数,転職意向を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。その結果,快適職場観のキャリア形成・人材育成,仕事の裁量性,処遇,社会とのつながり,労働負荷と自律的キャリア観の交互作用が転職意向と有意な負の関連を示した。さらに,単純傾斜の下位検定を行ったところ,キャリア形成・人材育成,仕事の裁量性,労働負荷の各快適職場観得点が高い場合には,自律的キャリア観と転職意向の関連は有意とならなかった。以上から,特定の快適職場観は,自律的キャリア観が転職意向に及ぼす影響を緩衝する可能性が示唆された。