日本白内障学会誌
Online ISSN : 2188-613X
Print ISSN : 0915-4302
ISSN-L : 0915-4302
学術賞受賞記念論文
ミトコンドリアおよび細胞膜傷害に伴う水晶体混濁機構の解明とその予防・治療薬の開発
長井 紀章
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 26 巻 1 号 p. 13-19

詳細
抄録

白内障予防および治療において,その発症機構を把握し,エビデンスに基づいた治療薬を開発することは非常に重要である.本研究では,3 種の遺伝性白内障モデルラット(UPLR,SCR,ICR)を用い,いずれの水晶体混濁機構においても一酸化窒素(NO)がかかわることを見出すとともに,NOを標的とした点眼製剤の開発とその抗白内障効果を評価した.その混濁機構として,UPLR では過剰なNO がミトコンドリアゲノム傷害とATP 産生減少を招き,その結果としてCa2+-ATPase の機能不全に伴う細胞内Ca2+増加や水晶体混濁がみられた.一方,SCR およびICR では過剰なNO が脂質過酸化を引き起こし,これによりCa2+-ATPase 活性が低下,結果として細胞内Ca2+が増加し水晶体混濁につながることを明らかにした.さらに,2- ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを用い,ラジカルスカベンジャーでありNO 産生阻害作用を有するジスルフィラム点眼製剤の調製法を確立し,本点眼製剤がNO を標的とした白内障薬物療法に有用であることを明らかにした.

著者関連情報
© 2014 日本白内障学会
前の記事 次の記事
feedback
Top