2014 年 25 巻 2 号 p. 97-99
頸動脈内膜剝離術後過灌流は,脳内出血や高次脳機能障害をもたらす原因とされている.この術後過灌流を予知するため,これまで様々な検討が行われてきた.慢性脳虚血による術前脳循環予備能の低下に加え,術中の内頸動脈遮断による脳虚血が,術後過灌流の発生に関連しているか否かにつき検討した.対象は頸動脈内膜剝離術を施行した頸部内頸動脈狭窄症患者89 例.脳血流量を術前および術直後にSPECT にて定量的に測定した.術前にはacetazolamide による負荷も行い,脳循環予備能も評価した.術中には経頭蓋脳酸素飽和度をモニタリングし,術中内頸動脈遮断による脳虚血の程度を評価した.術後過灌流は術前脳循環予備能が低下していた18 例中10 例(55.6%)に認められた.術前脳循環予備能の低下と0.9 未満の術中SO2 比(内頸動脈遮断直前の酸素飽和度に対する遮断中酸素飽和度最低値の比)をもった9 例全例で術後過灌流を呈した.多変量解析では,術前脳循環予備能の低下と術中SO2 比の低下が,術後過灌流発生の有意な独立因子であった.