富山県では脳出血死亡率が最近10 年間に男女とも漸増傾向にある.こうした背景を踏まえて,最近6 年3カ月間に当院脳卒中センターに入院した急性期脳出血患者(連続892 例)について,抗血栓療法の有無に分けてその関連因子と転帰を中心に検討した.抗血栓療法中の脳出血発症患者が全体の22.2%を占めており,抗血栓療法患者の方が非抗血栓療法患者に比べて有意に血腫増大傾向が高く(18.7% vs 3.2%: p<0.01),また抗血栓療法中患者の転帰の方が不良であった.抗血栓療法中患者の血腫増大を部位別に見ると,被殻出血が圧倒的に多く53.7%に達した.さらに,無症候性脳梗塞や慢性虚血性変化に対する安易な抗血栓療法や心房細動患者への抗血小板剤投与例が散見された.抗血栓療法患者の脳出血予防のためには,厳重な血圧管理・安易な抗血小板剤投与の回避・心原性脳塞栓症予防のための適切な薬剤選択の3 点に焦点をおいての,かかりつけ医との連携が必須と考えられた.