Chem-Bio Informatics Journal
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デオキシニバレノールがS. cerevisiae PTC1変異株に及ぼす遺伝子発現変化の解析
鈴木 忠宏岩橋 由美子
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2011 年 11 巻 p. 41-51

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抄録

デオキシニバレノール(DON)はフザリウム属の赤かびによって生成される二次代謝産物である。DONの汚染は主に低温と高湿度の環境下における小麦の栽培、貯蔵、あるいは船による輸送段階で生じ、食品や飼料中に混入する。体内への摂取は嘔吐、下痢、食欲不振などを引き起こすため、国際的な規制対象物質となっている。細胞に対する毒性はタンパク質生合成の阻害や細胞周期の停止が主として挙げられる。本研究では細胞周期や細胞構成の制御に重要なMAPキナーゼ経路の抑制制御遺伝子PTC1の変異株と低濃度の界面活性剤含有培地を用いることで、DONの毒性に関する遺伝子発現の変化を捉えた。発現解析の結果、本研究では葉酸合成に関わる遺伝子の抑制を検出した。葉酸はDNA合成の補酵素として働くことが知られているため、培地への葉酸の共添加によってDNA合成に対するDONの毒性緩和を試みた。その結果、DONの有無に限らず、葉酸はPTC1変異株の生育を向上させた。本研究の結果は、DONとの直接的な関わりは不明であるが、葉酸の添加がDONの毒性症状を緩和させることを示した。

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2011 Chem-Bio Informatics Society
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