Chem-Bio Informatics Journal
Online ISSN : 1347-0442
Print ISSN : 1347-6297
ISSN-L : 1347-0442
11 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Original
  • 厨 祐喜, 田中 重光, 小林 元太, 花井 泰三, 岡本 正宏
    2011 年 11 巻 p. 1-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は、代謝経路のボトルネックを同定し解消するための方策と基質投与の最適制御を組み合わせて、目的とする代謝物質生産の増大方策を探索するための解析的パイプラインの設計、開発を試みた。そしてケースタディとして、バイオ燃料の有力な候補であるブタノールを生産する代謝系として多くの注目を集めているClostridium属細菌によるアセトン-ブタノール-エタノール発酵へ、開発した解析的パイプラインを適用した。その結果、高ブタノール生産のためのグルコース投与の最適制御方策および遺伝子改変方策が得られた。また、これらの方策を組み合わせて、遺伝子改変方策の1つであるCoAT経路を10%抑制した場合におけるグルコース投与の最適制御方策を探索し、さらなる高ブタノール生産のための方策を提示した。このように本研究において開発した解析的パイプラインは、目的代謝物質生産増大のための方策を理論的に設計するのに有用であることが示された。
  • 木村 周平, 松村 幸輝, 岡田(畠山) 眞里子
    2011 年 11 巻 p. 24-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/02/25
    ジャーナル フリー
    遺伝子ネットワークのS-systemモデルを同定するための方法として問題分割法が提案されている。この手法はN遺伝子からなるネットワークの同定問題を、N個の2(N+1)次元の部分問題として定式化する。この手法により数十遺伝子からなるネットワークのS-systemモデル同定が可能になってきたが、その計算コストは依然として高い。そこで本研究では各部分問題をさらに(N+2)次元と(N+1)次元の2つの問題に分割する方法を提案する。そのために本研究では、線形計画マシンを用いた遺伝子ネットワーク同定法を利用する。次に本研究では,分割した2つの問題を交互に解くことで、効率的にS-systemモデルを同定するための新たな方法を提案する。数値実験により、提案手法の計算時間が従来手法の計算時間の三分の一以下となることを示す。最後に、提案手法を用いてE.coliのDNA修復系に関する実データを解析する。
  • 鈴木 忠宏, 岩橋 由美子
    2011 年 11 巻 p. 41-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/25
    ジャーナル フリー
    デオキシニバレノール(DON)はフザリウム属の赤かびによって生成される二次代謝産物である。DONの汚染は主に低温と高湿度の環境下における小麦の栽培、貯蔵、あるいは船による輸送段階で生じ、食品や飼料中に混入する。体内への摂取は嘔吐、下痢、食欲不振などを引き起こすため、国際的な規制対象物質となっている。細胞に対する毒性はタンパク質生合成の阻害や細胞周期の停止が主として挙げられる。本研究では細胞周期や細胞構成の制御に重要なMAPキナーゼ経路の抑制制御遺伝子PTC1の変異株と低濃度の界面活性剤含有培地を用いることで、DONの毒性に関する遺伝子発現の変化を捉えた。発現解析の結果、本研究では葉酸合成に関わる遺伝子の抑制を検出した。葉酸はDNA合成の補酵素として働くことが知られているため、培地への葉酸の共添加によってDNA合成に対するDONの毒性緩和を試みた。その結果、DONの有無に限らず、葉酸はPTC1変異株の生育を向上させた。本研究の結果は、DONとの直接的な関わりは不明であるが、葉酸の添加がDONの毒性症状を緩和させることを示した。
  • 小野寺 賢司, 川崎 平康, 上條 俊介
    2011 年 11 巻 p. 52-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    細菌RNAポリメラーゼを標的とする抗生物質は少なく、現在のところ、リファンピシンだけが治療薬として認可されている。しかしながら、細菌RNAポリメラーゼは菌の成長や生存に重要な酵素であり、新規抗菌剤の標的として有望である。よって、我々はバーチャルスクリーニングによる新規抗菌剤の探索を行った。バーチャルスクリーニングを行うにあたり、幅広い標的に対しHit化合物とされてしまうFrequent hitterの存在が問題となる。また、Hitリストを作成するにあたり、その精度もまた重要な問題である。我々は以前、汎用的なスコア関数の最適化を行っており、それを踏まえ、最適化されたスコア関数とFrequent hitterのより厳しい除去によるスクリーニングを実施した。スクリーニングには、標的となる2種の細菌RNAポリメラーゼの立体構造とFrequent hitterの除去のために細菌RNAポリメラーゼとは無関係な立体構造を2種使用した。結果として、購入した7種の化合物の内、2種の化合物がグラム陽性菌に対する抗菌活性を示すことが分かった。
  • Cetin Hikmet, 佐々木 尚, 笹井 理生
    2011 年 11 巻 p. 63-81
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    蛋白質の立体構造をそのアミノ酸配列から予測することは,バイオインフォマティクスの重要なテーマである。しかし,既知の構造を持つ蛋白質と類縁関係にない標的蛋白質の構造を予測するデノボ予測に関しては,信頼のおける予測法が確立されていない。デノボ予測を改善するひとつの方法は,予測されたモデル構造がどれくらい正しい構造に近いかを,正しい構造が判明する前に評価して候補構造を探し出す,構造評価法の活用である。この論文では,デノボ予測に適した新しい構造評価法として,フラグメントスコア法を提案する。この方法では,蛋白質の構造ライブラリから,ある長さを持ったフラグメントを集め,モデル構造の局所部分を評価し,その評価を総合して蛋白質構造全体の評価とする。フラグメントスコア法は,第7回および第8回CASPに出題されたデノボ予測のための標的蛋白質のうち,予測が困難なものについて,よいモデル構造を選択するために役立つことが示される。また,フラグメントスコア法は標的蛋白質におけるループやコイルなどの不規則構造について,よいモデル構造を選ぶために役立ち,さらに,配列ではわずかな違いしかないのに構造が大きく異なる2つの蛋白質を区別する能力も持つ。このように,フラグメントスコア法は鋳型構造の用意できないデノボ予測における予測法の改善に役立つほか,鋳型構造が使える場合でも,そのうちの難しい構造の解析のために効果的である。
feedback
Top