2018 年 18 巻 p. 1-9
高齢者における薬物の多剤併用により、抗コリン作用の重複による有害事象が問題となっている。薬物による抗コリン作用の負荷を推測するために、様々な抗コリン作用評価尺度が作成され用いられているが、作成者により評価が異なるなど、いくつかの問題点が指摘されている。本研究においては、抗コリン作用のより正確な判別と、抗コリン作用を有する薬物の特徴を把握することを目的として、薬物の物理化学的性質を表す記述子を用いて抗コリン作用の判別モデルを決定木により作成した。5分割交差検証法により良好な汎化性能を示す判別モデルを作成した(R2=0.681)。さらに、抗コリン作用を有する薬物を判別するための化学構造的特徴量として、ファンデルワールス表面積や部分電荷、および分子形状と関連する6種類の記述子(ASA_P、GCUT_PEOE_0、opr_brigid、PEOE_VSA+1、GCUT_SLOGP_0、 vsa_pol)が重要であることを明らかにした。この結果は、薬物のムスカリン受容体に対する親和性において、静電的相互作用とともに疎水性相互作用が重要な要因として寄与していることを示唆していると考えられる。