2018 年 18 巻 p. 96-118
本論文では、陽溶媒中でのDNAオリガミ構造体のMDシミュレーションに無機支持膜を利用した新しい手法を紹介する。 典型的な原子数は、水分子を含むと約1600万を超える。 GPU対応のMDシミュレーションエンジンを利用して、通常のイオン強度と脱イオン水条件下でのDNAオリガミ構造体の構造変化を1ナノ秒オーダーのシミュレーション時間まで解析し比較検討を行った。その結果、通常のイオン強度の場合は大きな構造変化は見られないが、 脱イオン条件下では絶え間なく伸長運動することが明らかになった。またオーダーパラメータZp'を用いてDNAオリガミ構造のヘリックス型の統計解析を行ったところ、陽イオンだけでなく水の誘電率も伸長運動中のB-DNAヘリックス型コンホメーションの維持に寄与していることが示された。これらの結果は、スキャフォールド、コネクター、チャネルなどのDNAオリガミ構造コンポーネントのアセンブリとして分子ロボットを設計する際に重要となる性質を提示している。