2018 年 18 巻 p. 123-153
フラグメント分子軌道法におけるフラグメント間相互作用エネルギー行列(IFIE行列)の統計的性質をランダム行列理論によって解析した。IFIE行列の固有値、固有ベクトル、その尖度、アンフォールドされた固有値間隔分布を対応するランダム行列と比較した。固有値分布の概形はウィグナー分布に一致しないが、ウィグナー分布の制限から外れる固有値は4個だけであった。固有ベクトルの尖度は局在側に乖離するものが多い。アンフォールドされた最近接固有値間隔分布はガウス型直行集団の解析値に、次近接固有値間隔分布はガウス型シンプレクティック集団の解析値と無矛盾であった。ランダム行列理論の尖度に基づいて、強く相互作用するフラグメントのクラスター解析を行った。第1固有ベクトルの有意な成分の分布は2値分布となり、相互作用するフラグメントが、主成分分析の意味でほぼ同じ重みで相互作用していることを表している。第2、第3、第4固有ベクトルは第1固有ベクトルの部分集合となっていること、尖度がランダム行列から大きく乖離した固有ベクトルが更にそれらのベクトルの部分集合となっているなど、相互作用クラスターの階層構造の分類を詳細に行った。