2002 年 2 巻 1 号 p. 1-17
質量作用則に基づく微分方程式と定常状態近似式が混在した数理モデルでも非線形連立微分方程式が導出できる、新しいバージョンのシミュレータMassAction++を開発した。利用者は理論的アプローチにおける数理モデルの導出や数値計算について全く意識することなく、反応系の動的挙動を快適にシミュレートすることができる。また、JAVAアプレットとして開発したことにより、インターネットに接続されているマシンであれば、機種に関係なく利用できる。使用する際には、WebブラウザでBEST-KITのホームページ(http://helios.brs.kyushu-u.ac.jp/~bestkit/)にアクセスするだけでよい。シミュレータ内に予め反応物質や反応ステップを表す各種のシンボルを用意しておくことにより、利用者がマウスを使ってそれらのシンボルを自由に組み合わせて、任意の反応系を視覚的に構築できる。シミュレータをクライアント・サーバ型に設計し、全ての数値計算をC言語で開発された計算プログラムを用いてサーバ側で行うことにより、JAVA言語の処理速度に関するデメリットを解消した。これにより、解析対象が大規模なものであっても、利用者が快適にシミュレーションを実行することができる。シミュレータにセーブ・ロード機能を実装させたことにより、JAVAアプレットでありながら、利用者は構築した反応スキームや計算結果を自身のマシン上に保存でき、また保存したデータをシミュレータに読み込ませることが出来るようになった。さらに、タイムコースシミュレーション機能だけでなく、パラメータフィッティング機能(最適化による未知パラメータの推定)も備わっている。