Chem-Bio Informatics Journal
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P-糖蛋白質(ABCB1)の基質特異性を解析するための高速スクリーニング法と構造活性相関解析法の開発
大西 裕子平野 弘之中田 國夫大隅 啓輔長倉 誠樽井 茂樹石川 智久
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2003 年 3 巻 4 号 p. 175-193

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抄録
P-糖蛋白質(ABCB1/MDR1)は、薬物の細胞外への排出を行い、薬物体内動態に関して重要な役割を担う。本研究において、我々は多種多様な薬物および化合物に対するP-糖蛋白質(ABCB1)の基質特異性を解析する高速スクリーニング法を開発した。基本的には、P-糖蛋白質(ABCB1)をSf9昆虫細胞で発現させ、ATPase活性を測定するものである。41種類の市販薬および化合物の中で、Ca2+チャネル拮抗剤であるベラパミル、ベプリジル、フェンジリン、プレニルアミン、ニカルジピンはATPase活性を顕著に上昇させた。一方、ドキソルビシン、パクリタクセル(タキソール)、キニジン、FK506はATPase活性を上昇させたが、その程度はCa2+チャネル拮抗剤より小さかった。上記41種類の市販薬および化合物について界面活性力を測定し、Kaw(空気/水分配係数)とATPase活性の2次元プロットを行うと、P-糖蛋白質(ABCB1)の基質群と非基質群を明確に区分することができた。P-糖蛋白質(ABCB1)の基質群においては、logKaw値が4.3以上であった。さらに、P-糖蛋白質(ABCB1)のATPase活性を基に、ステロイド類を除く37種類の市販薬と化合物について構造活性相関の解析をおこなった。多様な化合物について基質特異性を予測する相関モデルを構築するためには、多様性を系統的に取り扱う記述言語が必要であり、本研究ではケミカルフラグメントコードを導入した。37化合物から209ケミカルフラグメントコードが発生された。ATPaseの相対的活性を目的変数とし、ケミカルフラグメントコードの有無をダミー変数として線形重回帰を行った。その結果、P-糖蛋白質(ABCB1)の基質特異性と密接に関係するケミカルフラグメントコード数種が見出された。したがって本研究は、P-糖蛋白質(ABCB1)の基質特異性と化学構造を解析する上で有用で実践的な方法を提供し、血液脳関門を通過し易い、あるいは癌の多剤耐性を克服するような新薬の分子デザインに重要な貢献をするものと考えられる。
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2003 Chem-Bio Informatics Society
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