2003 年 3 巻 4 号 p. 194-200
類似した立体構造を持つタンパク質の中には、アナログ、リモートホモログと呼ばれるアミノ酸配列の類似性が非常に低いにも関わらず、類似した立体構造を持つものが数多く存在している。このため、タンパク質の立体構造とそれに対応するアミノ酸配列との関係は単純ではない。しかし、これら配列類似性が低いタンパク質は物理化学的な相互作用という観点から見れば、類似したメカニズムで立体構造を形成していると考えられる。そこで、本研究では、アミノ酸配列の物理化学的な特徴として電荷に注目し、アミノ酸配列上における電荷分布を粗視化して比較できる解析法(CDプロット)を考案した。これを用いて配列類似性の低い構造類似タンパク質ペアの電荷分布を解析したところ、電荷分布が類似しているペアだけでなく電荷分布が反転しているペアが存在することがわかった。電荷をすべて反転しても、お互いの相互作用は変わらないという事情から、こうした電荷分布の特徴は、タンパク質の構造形成に電荷クラスターが重要であることを示唆している。