2020 年 41 巻 1 号 p. 23-27
周産期心筋症は、心筋疾患既往のない女性が、妊娠から産後に重度の心機能低下に伴い心不全を発症する、未だ原因不明の心筋症である。高齢、妊娠高血圧症候群や多胎妊娠などが危険因子として知られている。息切れや浮腫などの心不全症状は、健常妊産婦も訴える症状と似ているため、診断遅延や重症化の要因となり、主な母体死亡原因疾患のひとつに挙げられる。近年、モデル動物による基礎実験を基に、病因に関する新たな知見が報告され、遺伝子解析研究により、他の心筋症との関係も明らかになってきた。心不全治療においては、周産期特有の病態を踏まえる必要がある。一方で新たな疾患特異的治療として、抗プロラクチン療法の試みが始まっている。