咬合異常は慢性的なストレスを誘発して交感神経活性を誘導することが報告されている。一方慢性的なストレスは心血管系疾患の危険因子になることが報告されている。しかしながら咬合異常と心疾患との関連についての詳細は不明である。本研究ではマウス下顎前歯に歯科用レジンを装着し、咬合拳上( BO, bite-opening)を行った咬合異常モデルを用いて、咬合異常が心機能に及ぼす影響について検討した。
BO処置2 週後に心機能を測定したところ、BO群ではコントロール群に比較して有意に心機能は低値を示した。心重量は両群間で有意差が見られなかったが、マッソン- トリクローム染色を行うと、BO 群ではコントロール群に比較して線維化領域の増加が確認された。以上のメカニズムを解明するためウェスタンブロッティングを行った。その結果、コントロール群に比較してBO 群では、アポトーシス促進タンパク(Bax)とアポトーシス抑制タンパク(Bcl-2)比が高値、心筋線維化を促進するextracellular signal-regulated kinase の活性化、ホスホランバン(Ser-16, Thr-17)のリン酸化が増加していた。
以上の結果より、咬合異常は心臓リモデリングを誘導して心機能を低下することが示唆された。
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