中国では、民営大学に比して国立大学が圧倒的に高い評価を受けている。しかし、中国を代表するビジネススクールの一つである長江商学院は、民営大学でありながら、例外的に有力国立大学に比肩する評価を受けている。こうした状況を踏まえ、本稿は長江商学院の発展要因を明らかにすることを主眼に置く。
長江商学院の競合校である有力国立大学のビジネススクールの場合,政治・行政からの介入を受けつつも,母体大学が培ってきた伝統や知名度も手伝って,優秀な教員や学生を集めることが可能である.しかし,2002年に開設され後発かつ民営の長江商学院が同様の手法を採ったのでは,有力国立大学のビジネススクールに比肩することは不可能であり,独自戦略の採用が不可避であった.
そこで長江商学院は、政治・行政からの介入を受けない教員自治による運営体制―,中国企業を事例とするケースメソッド教育など受講生のニーズに即した教育を行える教員の採用・評価システム構築,学費が高額なExecutive MBAプログラム及び企業の経営幹部向け非学位型エグゼクティブ・プログラムの充実化を通じた財務基盤の確立など,競合相手である国立大学にはない独自戦略を採用した.中国にフォーカスするという差別化戦略やグローバル企業での実務経験豊富なスタッフを多数雇用するなど,香港最大規模の企業グループである長江実業を率いる李嘉誠氏の基金会のバックアップを受ける長江商学院は,私企業的な手法も採り入れている.こうした独自戦略こそが,長江商学院が発展した要因であると推察される.