2025 年 21 巻 p. 110-121
本研究は、企業の消費者対応部門に勤務する若手・中堅社員11名へのインタビュー調査を基に、当該部門での業務経験がキャリア形成に与える影響を探った。分析の結果、苦情対応などストレスの高い業務をこなしながらも、若手・中堅社員は業務の多様性と対人的スキルの習得を前向きに捉え、専門的知識と汎用的能力の両面を発揮できる場とみなしていることが明らかになった。また、組織内評価や社内連携の課題が存在する一方で、積極的なローテーション希望や資格取得など、柔軟なキャリアビジョンを描く意欲が示唆された。こうした知見は、消費者対応部門が苦情処理を超えて企業戦略の一翼を担うだけでなく、人材育成やキャリア支援の上でも有用な役割を担い得る可能性を示しており、既存のキャリア志向理論を補完する理論的・実務的意義を持つと考えられる。