2025 年 21 巻 p. 88-98
本研究の目的は、発達時期別過去体験の表出と心理的well-beingとの関連を明らかにすることで、個人の発達に及ぼす要因を検討するものである。そのため20〜50代を対象にどのような体験活動が個人の成長に影響があったのかについてオンライン調査を行った。本調査では幼少期から就業するまでを5期に分け、各発達時期別に過去体験「表出あり・なし群」に分類し、具体的な影響内容を自由記述で尋ねた。その結果、心理的well-beingが高い人ほど表出数が多く、幼少期では自然体験や地域交流体験を通して得た「好きなこと」「得意なこと」が自分なりの有能感や本来感(自分らしさの感覚)として表出されていた。特に若年層ではその傾向が大きかった。また、心理的well-beingが高く、過去体験の表出数が多い人の特徴として、中学生期・高校生期におけるネガティブな経験に対して自己成長という肯定的意味を見出す傾向が確認できた。