抄録
水田水域に生息する多くの魚類は繁殖のため一時的水域へと移動することが知られているが,ため池内に生息する魚類の生活史については十分な研究が行われていない。そこで本研究は,魚類のため池‐水路‐水田間の水域ネットワーク利用実態の把握を目的とした。調査の結果,灌漑初期において,降雨に伴って多数のドジョウやフナ属がため池から水路・水田へと遡上しており,ため池内に生息する魚類も繁殖期に周辺の水路や水田に移動し産卵を行っていると考えられた。とくにため池内にオオクチバスが生息している場合,ため池から水路・水田へ移動し繁殖を行うことは在来魚類にとって大きなメリットであると考えられた。