抄録
「緑のカーテン」による温熱環境の緩和効果,とりわけ蒸散に伴う緑被層周辺の気温変化に注目して実測調査を行った。緑被層の前後における気温変化を把握するためには,緑被による日陰部分と基準となる日向面の気温を比較することになる。そこで,気温測定における日射影響を極力避けるため,極細の熱電対(線径0.025mm)と超音波風速温度計を用いて注意深く観測を行った。その結果,葉群層の周囲では相対的に気温が高くなっており,緑のカーテンを通過した空気は,むしろ外気温よりも加熱されていた。葉の表面温度は,外気温よりも高温であり,蒸散作用により空気が冷却されている証拠は得られなかった。