抄録
近年わが国においては,有害化学物質に関するリスクコミュニケーションは主に個別の事業者と周辺住民との間で行われてきた。しかし,個別事業所のみのリスクコミュニケーションでは,様々な発生源から排出される化学物質の地域への累積的影響を把握することが困難であるなどの限界がある。今後は複数の事業者が協力して地域レベルでリスクコミュニケーションを行っていくことも必要である。そこで本研究では,地域の事業者が協力してリスクコミュニケーションを行うにあたり,どのような協力形態が現実的なのか,という問題意識に基づいて調査を行った。その結果,行政主導による異業種間の協力に基づくコミュニケーションの実施が望ましいと考えていることなどが明らかになった。