静脈学
Online ISSN : 2186-5523
Print ISSN : 0915-7395
ISSN-L : 0915-7395
総説
脳静脈灌流障害の病態と治療―術後脳静脈梗塞の臨床的検討―
中瀬 裕之開道 貴信新 靖史西岡 利和榊 寿右
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2002 年 13 巻 3 号 p. 181-185

詳細
抄録

脳外科手術中の脳静脈損傷により術後静脈梗塞を起こした自験例から,脳静脈灌流障害の病態と治療を検討した.対象は,男性3例女性5例(平均58.1歳)の8症例である.手術は脳腫瘍摘出術5例・cavernoma摘出術1例・dural AVF摘出術1例・神経血管減圧術1例.症状の発現は手術中2例・術当日3例・術後1日1例・術後3日1例・術後4日1例で,症状として,術中脳腫脹2例・見当識障害1例・小脳症状1例・片麻痺1例・失語2例・頭痛1例がみられた.外科的療法を要したものが2例,保存的に対処できたものが6例である.症状の発現が早いものほど重篤な症状がみられた.予後は良好が6例,軽度障害を残したものが2例であった.

以上より,(1)急激に脳静脈潅流障害を起こしてくる群と二次性静脈血栓の進展により緩徐に症状が発現してくる群があり,前者ほど症状は激烈で早期から外科的処置を含めた治療が必要となり,後者では静脈血栓の二次的進展の防止が重要となる.(2)術後静脈梗塞の症状や程度は様々であるが,早期の治療により良好な経過をとる.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top