抄録
本研究では,都市近郊地域のコミュニティバス事業に着目し,事業の意義として地域社会に対する波及効果を評価することを目的とした。コミュニティバスは利用者が空間を共有し,様々な情報交換を行う場であるという見方から,ソーシャルキャピタル概念を用いた評価を試みた。分析の結果,コミュニティバスの利用を通じて,特に付き合いが深い人間関係以外の地域住民へと信頼感が拡張し,また地域の連帯感を強く意識するようになる傾向が明らかとなった。これらの効用によって,住民同士による協働活動の効率性改善が期待されるが,その効果は限定的であり,情報伝達や新たな社会的ネットワークの創出については,有意な効果はみられなかった。