抄録
既往研究においては,一般的信頼と特定化信頼は阻害関係にあるとされてきた。本研究では,京都府北部に位置する3自治体全ての農業集落地域の全世帯を対象にした質問紙調査結果(7,828サンプル)に対して,これら2種類の信頼の相互関連をマルチレベル分析を行って検討した。その結果,2種類の信頼は個人内部では正の関連を有しているが,個人と集落間の関連は有していないことが明らかとなった。また,同種類の信頼は個人と集落間で正の関連が確認され,地域全体の信頼の特性に類似する形で個人の信頼が形成されていることが確認された。今後,地城内住民に対する特定化信頼を保持させたまま,一般的信頼も形成する社会関係の転換を目指すことが望まれる。