抄録
本研究は、都市水路網の機構と庭園泉水との間にある相互関係の把握を目的とし、群馬県甘楽町小幡を対象に分水機構および泉水の意匠に関して調査分析する。古地図や文献と測量データをもとに水路網関係図を作成し、水路網と泉水の意匠との関係を分析する。その結果、以下の知見が得られる。(1)水路網の約7割は私邸内を通過し、効率的な配水に寄与する。(2)私邸内への導水と分水機構が対になり、水路網への影響を低減している。(3)私邸内でも水路は分水し、泉水の機能と意匠の多様化をもたらす。(4)分水機構が微地形と慎重に組み合わされ、泉水の意匠に利している。以上より、泉水の保全には接続する水路網との一体的な保全が求められる。