抄録
本研究では,発病年だけではなく過去の濃度も考慮した累積濃度と,複数の汚染濃度を単一の指標で表す合成濃度を,健康被害と大気汚染濃度の関係を表す曝露反応関数の推計に考慮することを,公害健康被害補償制度の第一種指定地域の5都市を対象に,新規認定患者率と二酸化硫黄,二酸化窒素,浮遊粒子状物質の濃度データを用いて検討した。その結果,累積濃度と合成濃度を曝露反応関数に用いることで,個別の濃度より精度が高くなることを示した。また,都市や汚染物質で共通した累積年数の累積濃度を用いた合成濃度による曝露反応関数を推計した結果,濃度変化の健康被害への影響を都市によらず共通とすることで説明力が高くなる可能性を示した。