抄録
近世紀行文17文献に掲載された11切通しを対象に,その観光的意義を風景描写と旅行者認識より捉えた。その結果,鎌倉七口と呼ばれる著名な7切通しに関する記述が61件と圧倒的に多くみられ,朝比奈切通しに関する記述が13 件と最多であった。旅行者認識から得られた全切通しに共通する観光的意義として「アプローチ性」を導いた。また,「歴史性」は主に鎌倉中心部の切通し,「境界性」は朝比奈切通しや名越切通しなどに特徴づけられる観光的意義であり,特に「境界性」は,風景描写における囲繞感を伴って記されることを捉えた。