抄録
ラオスのナムトゥン2 ダムによる移転村では,移転に伴って生計手段を失った移転住民の生計回復計画が実行されているが,資源利用の持続性への懸念と格差の拡大が指摘されている。本研究では,インタビュー調査と衛星画像の解析によって16 の移転村の資源利用と生計手段の現状を把握し,同じ補償を受けた村と村の間で収入格差が生じる要因を分析した。分析の結果,移転地域での村ごとの森林の減少状況を定量的に確認した。また,立地条件によって収入の構成が異なること,収入構成によって識字率が収入に与える影響が異なることがわかり,特に農業が盛んな村の間では格差が小さい一方,農業の盛んでない村では識字率の差によって大きな収入格差が生じていることが明らかとなった。