抄録
本研究では,遭難事故が急増する長野県を事例とし,長野県警による遭難記録をもとに分析を行い,遭難事故軽減策を検討した。2010年以降の山岳遭難件数の急増は,遭難発生確率が上昇したことも含め,登山者のリスク対応能力(体力や判断力)の低下によるところが大きいと推察された。山域と遭難者の年齢が遭難態様に関わる既往研究の指摘をもとに,2010年以降の特性を分析した結果,事故に陥る可能性の高い山域において,登山者自身のリスク対応能力が低い登山者が入山した場合,遭難発生確率が高まると推測された。そのため,各山域の遭難特性に応じて登山者に対応能力に応じた対処方法を周知する仕組みが必要であると考えられた。