抄録
本稿は,COP13 後の生物多様性条約(CBD)事務局通知(2017-037)に対する各国の返答を素材に,各国の主張を項目別に整理すると共に,法的な観点から考察することを目的とする。考察では,1.定義や2.DSI の利用と利益配分,契約の関係等の5項目別に検討を行った。その結果,開発途上国と先進国間の見解は,項目ごとに対立していたことが明らかにされた。特に,先進国は,遺伝資源の取得に伴って締結する契約が,DSI の利用(データベースを介したDSI の利用も含む)に制限を課してきたとする一方で,開発途上国は,遺伝資源の取得を伴わない場合を検討する必要があると真っ向から対立している。