ニホンジカ(Cervus nippon)の採食圧が高い森林におけるシカ不嗜好性植物の分布域拡大の詳細な過程は明らかになっていない。そこで,奥秩父山地においてシカ不嗜好性植物であるヒトリシズカ(Chloranthus japonicus)とフタリシズカ(Chloranthus serratus)の分布域拡大の過程について調査を行い,1)シカの採食圧がシカ嗜好性植物を減らし,これによって種間競争が弱くなる,2)競争から解放されたシカ不嗜好性植物が分布域を拡大する,3)土壌水分量もシカ不嗜好性植物の分布に影響を与える,の3 点をデータに基づき明らかにした。