抄録
北海道室蘭市の輪西地区において,日本固有の海崖植物ラセイタソウ(Boehmeria splitgerbera)の二次的生育地となりうる擁壁の環境条件を検討した。本種は36箇所の擁壁のうち10箇所で観察され,このうち,6箇所はコンクリートブロック製であった。擁壁上の群落から海岸線までの最大距離は713.7 m(平均375.3m, 標準偏差193.1)であった。Welchのt検定や決定木分析等の結果から,ラセイタソウの生育には,海岸線までの距離が最も強く影響し,これに次いで全天空率や海崖からの距離も影響すると考えられた。これらのことから,海岸・海崖に近い擁壁はラセイタソウなどの海崖植物の二次的な生育地として活用でき,その際には環境要因として全天空率に配慮すべきと結論づけられた。