蒸気養生を施し、材齢5年まで水中養生したエトリンガイト系の膨張コンクリートについて、蒸気養生温度が寸法安定性に及ぼす影響を調査した。本試験の水結合材比38%の膨張コンクリートでは、蒸気養生温度90℃で遅れ膨張が確認され、80℃以下では遅れ膨張や強度低下は生じなかった。蒸気養生温度80℃以下では硫酸イオンの溶出量が90℃に比べて少なく、蒸気養生温度の適切な制御で、エトリンガイトの分解のリスクを低減できる可能性が示唆された。膨張コンクリートを用いた場合でも、マスコンクリートのひび割れ制御指針で規定されるR2O量やSO3量、蒸気養生温度の範囲内で使用することで、遅れ膨張の危険性が低減できる可能性が高いと考えられる。