2021 年 77 巻 1 号 p. 66-80
本稿は,治水安全度の向上と地域再生を同時に実現する,まちづくり治水計画の実装化に向け,可搬式堤防を活用した治水整備を実施したドイツ・ミルテンベルクを対象に,計画経緯や検討体制,整備内容を詳述し,その特徴を考察したものである.治水とかわまち空間を両立する整備を実現できた要因として,1) 市町村の主体的な関与システム,2) 実施体制と計画の目標設定,3) 合理性に基づく柔軟な堤防法線,4) 可搬式堤防を活かす「かわまち空間」デザインの4点を指摘し,とくに4)については,可動式堤防と合わせ,a) 風景の質を高める堤防デザイン,b) まちと川の一体感を高める境界デザイン,c) まちと連動した河岸の居場所デザインの重要性を指摘した.また,それぞれの項目について,日本の状況も踏まえ,日本での計画の実装化に向けた提案をおこなった.