日本先天異常学会会報
Online ISSN : 2433-1503
Print ISSN : 0037-2285
D_1-trisomy症候群の2剖検例
池田 高良島田 勝信岡本 直正角谷 哲司中山 俊彦佐藤 秀生
著者情報
ジャーナル フリー

1971 年 12 巻 1 号 p. 21-33

詳細
抄録

D_1-trisomy症候群に関しては欧米では既に約200例の報告があるが,吾国では未だ数例にすぎない.本症候群は多くは胎児・新生児にみられ,比較的特異な奇形を合併しているため出生時容易に診断される.青々は最近,剖検時の染色。外分析によって本症候群を確認しえた2例に遭遇したので報告する.症例1は既に報告したものであるが補足所見がえられたので改めて記載する.尚,D_1-trisomy症候群の臨床的事項に関しては肌に多くの記載がだされているので,他の文献にゆずり,本報告では若干の発火病理学的考察を行なった.症例臨床的および病理学的所見は欧文表1および2に記載してある.症例1.剖検番号HG-1862臨床上特異的た所見は母親の低身長,姉の兎唇,患児の血清LDH活性の上昇である.碍擬は妊娠中著患なく,両親・姉ともに染色体異常はない.病理学的所見1.無嗅脳症(完全)および左前頭葉発育不全2.小脳白質における異所性灰白質および未分化細胞集団形成3兎唇・口蓋裂(両側)4.心・大血管異常a.肺動脈発育不全を伴う部分的大血管転換症b.心房中隔欠損C.二弁性肺動脈弁d.単一冠状動脈e.大血管分岐破格C型(足立による)5.両側上下肢における名指・趾症6.腕帯ヘルニア7.メッケル憩室8.総揚問膿症および腸回転異常9.胆管走行異常10.耳介変形および下方付着(軽度)11.踵骨後方突出および舟底状足底12.1腎微小嚢胞(上部細尿管性)13.甲状腺嚢胞14.肺気腫および気管支拡張症15.頭蓋骨化骨不全16.副脾17.停禰睾丸症例2.剖検番号HG一1864臨床的特異所見は母親の低身長,既往妊娠6回中5回流産(4回向然流産,1回人工流産)である.両親ともに染色体異常はない.病理学的所見は症例1と類似している.症例1の診断項目中程度はやや異るが,1,2,14,5,6,7,8,1011,121,13,15,16が本例にもみられる.これらのほか,横隔膜ヘルニア,二次性右心症,左上大静脈遺残,単一脇帯動脈がみられた.類似症状中の程度の差異点は,痕跡的嗅脳の存在,右足のみの多趾症,重症糖ヘルニア,などである.亦,腎微小嚢胞は下部細尿管の拡張によるものであった.

著者関連情報
© 1971 日本先天異常学会
前の記事 次の記事
feedback
Top