製茶工程が機械化される以前の釜炒り茶の製法を聞き取り調査した。熊本県内でみられる釜炒り茶の製法は水平に設置した釜を用いてナマハゴロシ,所謂殺青を行う青柳製釜炒り茶である。揉捻後は炒っては冷ましてという工程を繰り返す。殺青の際に用いるマタギは農家によって形状に差異がある。
青柳製釜炒り茶の産地である熊本県でも,傾斜釜による製法が導入された痕跡もみられる。しかし,その後に訪れる機械製茶によって傾斜釜による製法は無かったものと認識されていると推察する。また,炒り葉,揉捻,日干し乾燥の工程を経る釜炒り日干し茶は品質が劣る茶であるが,釜炒り茶と混同された可能性があり,生産地域が限られている釜炒り茶が適正に評価されていない原因の一つと考える。