茶業研究報告
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茶樹の倍数性利用に関する研究 (第1報)
原田 重雄鳥屋尾 忠之稲葉 豊年
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1957 年 1957 巻 10 号 p. 9-14

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抄録

1.茶樹の倍数性利用に役立てるために,コルヒチン処理による人為四倍体の作出,および三倍体品種の実生から自然四倍体の作出に成功したのでその結果について報告した。あわせて,このコルヒチン処理によつて得た特異な混数体の調査結果の一部についても報告した。
2.昭和28年,茶樹品種たまみどり・やまとみどり・べにほまれの実生おのおの60の発芽々生にコルヒチン水溶液0.2%を数回滴下処理し,やまとみどりで四倍体1,混数体1,べにほまれで四倍体3を得た。
3.昭和29年に三倍体品種U24の自然種子を播いて得た実生7個体のうち,1個体が自然四倍体であることを確認した。
4.得られた四倍体は母品種に比し,人為四倍体・自然四倍体とも次のような共通した特徴をもっていた。成葉の葉長・葉巾・葉厚はいずれも増加し,いわゆるギガス型を示し,葉面積を増し,葉型指数(葉長/葉巾)は減少した。更に細胞の大きさを表わす気孔密度は減じ,気孔長徑は増加した。葉の内部組織は,表皮・柵状・海綿のいずれの組織も厚かつた。
5.小葉の品種やまとみどりから得られた四倍体の成葉は,大葉の品種べにほまれから得られた四倍体のそれ.より明らかに小型であつた。このことは染色体数倍加による巨大化がもとの品種の遺伝的特性に応じていることを示すものと考えられた。
6.これらの四倍体はいずれも実生で,個体ごとに遺伝的素質が異なるため,染色体数倍加による形質の変化の傾向を直接的に知ることはできなかつた。この点については栄養体から四倍体を得て比較検討を行う必要のあることを指摘した。
7.コルヒチン処理(やまとみどり)により得られた混数体は大葉・小葉の二部に区分され,それぞれを構成する細胞の染色体数は大葉が大部分2nで一部4n,小葉は大部分4nで一部2nであつた。また挿木の根端細胞では大葉が4n,小葉2nと逆の結果を示した。
8.この混数体の研究により組織の発生学的相同関係や,挿木の根原基の発生部位の決定等にも役立つ一資料が得られるものと考えられた。

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