茶業研究報告
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茶のフッ素含量に関する研究
岡田 文雄古谷 弘三
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1969 年 1969 巻 30 号 p. 37-43

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抄録

茶に含まれるフッ素の利用を図るため,1963~1967年にフッ素の定量方法,茶のフッ素含量,また,施肥ならびにフッ素施用によるフッ素含量の相違および,熱湯浸出と有機溶剤によるフッ素溶出量について検討した。その結果を要約すれば次のごとくである。
1) フッ素はTh-Neo-Thorin比色法で定量したが,その結果は,回収率では99%以上が得られ,焼却温度は600℃が適当と思われた。
2) 種々の無機質窒素肥料の施用が茶のフッ素含量に及ぼす影響はみられなかったが,過リン酸石灰を施用した場合には,フッ素含量が多くなっていた。
3) 茶のフッ素含量は若芽よりも成葉に多く,成熟に伴い増加することが認められ,特に古葉に多いことが明らかとなつた。
4) 茶樹のフッ素含量を器官別にみると,葉に最も多く,茎と根は大差がなかった。
5) 多重段浸出によってインスタントティーをつくり,固形分当たりのフッ素含量を調べたところ,茶種によって異なるが,150~500ppmが含まれていた。
6) やぶきた,はつもみじ,べにほまれをポットで栽培し,フッ素施用の効果を検討した結果,フッ素の施用と無施用との間に明らかな差があり,フッ素の施用により茶葉中にフッ素が著しく増加することが認められた。
7) フッ素の溶剤に対する溶解度を検討した結果,有機溶剤と熱湯では,熱湯によるほうがフッ素の溶出量が多く,全体の60~80%が,また,有機溶剤ではアルコールに50~60%,エーテルには40~50%溶解することが判明した。
水溶性のフッ素,あるいは残留フッ素の直接的利用方法については,一例として虫歯の予防などが考えられるが,われわれの研究としては困難な問題も多いと考えられるので,これらの問題は利用方面の専門家に任せることとした。
この研究の遂行に当たってご指導をいただいた,静岡女子短期大学学長松浦新之助氏,ライオン歯磨研究所斉藤浩氏,ならびに,試料をいただいた当場土壌肥料研究室石垣幸三,高柳博次両技官に感謝する。

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