茶業研究報告
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茶樹の育種における重要形質の早期検定 (第2報)
紅茶用品種の収量と新芽の諸形質間の重回帰分析
安間 舜
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1971 年 1971 巻 35 号 p. 35-41

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抄録

茶の収量の早期検定に資するため,紅茶用育成系統を用い,成木園の収量に対する単位面積当たり芽数,百芽重,新芽の芽長,葉数,摘芽長および株張りの6形質の重回帰分析を行なった。さらに,これら諸形質の収量に対する相対的な強さを検討した。その結果次のことが明らかになった。
1. 各茶期ごとに算計された15の重相関係数はいずれも1%または5%で有意であった。
2. 6形質を用いて収量を推定する重回帰式は次のとおりである。
一番茶期;Y=-1792.5+2.36X1+3.02X2+19.79X3+17,08X4,-20.27X5+1,32X6
二番茶期;Y=-1239.6+0.75X1-0.02X2+21.96X3+35.74X4-7.87X5+0.77X6
三番茶期;Y=-387.4+1.48X1+3.48X2+22.80X3-39.40X4-24.10X5+0.49X6
これらの重回帰式の一,二,三番茶期の重相関係数はそれぞれ0.902,0.946および0.855であった。また,寄与率はそれぞれ81%,89%および73%であり,これらの重回帰式で収量をかなり正確に推定できることを認めた。
3. 収量を推定する重回帰式で,関与する形質の数が少なくなれば重相関係数も低下した。
4. 芽数,芽長,株張りの3形質による重回帰式の重相関係数は一,二,三番茶ではそれぞれ0.868, 0.921, 0.780で, 6形質全部を用いた場合の重相関係数と大きな差はなく,実用的には芽数,芽長,株張りで収量は十分に推定できることを認めた。
5. 各茶期とも芽数,株張りに芽長を組み合わせるほうが,百芽重を組み合わせるよりも重相関係数がやや高くなる傾向があった。
6. 各重回帰式における諸形質の偏回帰係数のうちで,各茶期を通じて有意性が多く認められたのは芽数,株張り,芽長であった。
7. 収量に対する諸形質の相対的な強さを示す標準偏回帰係数も,各茶期を通じて芽数,株張り,芽長が大きく,これらがそれぞれの重回帰式において,収量推定に大きな影響を与えることを示していた。
これらの結果から,収量の早期検定には,成木園の芽数,株張り,芽長の3形質と相関の高い幼木期の形質を見いだすことが必要であると恩われる。

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