茶業研究報告
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奈良県産茶樹のクワシロカイガラムシに発生するカイガラムシ猩紅病
寺田 孝重今西 実
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1974 年 1974 巻 41 号 p. 44-47

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抄録

奈良県において茶樹に発生するクワシロカイガラムシ(Psendaulacaspis pentagona TRAG.& Tozz.)雌成虫上に,濃紅色の子のう殻や,赤橙色の分生子褥が形成されているのが観察された。
分生子褥は,クワシロカイガラムシの増殖する梅雨期より散見されるようになり,これができるとクワシロカイガラムシの密度は低下する。このため本病菌の分離,同定を試みた。
虫体上の子のう胞子はだ円形で,中央に1隔膜を有し,大きさは15~22×8~9μ,分生胞子は新月形で7~11隔膜があり,大きさは89~131×5~7μであった。この子のう胞子および分生胞子の単胞子分離株をmalt agarやpeptone glucose agar等の培地に25℃で培養すると,白色の菌そうを作り分生子褥上に分生胞子を形成する。この分生胞子の大きさは101~153×6~8μで虫体上の分生胞子と形態もほぼ同じであった。
DINGLEYおよびBOOTHの分類に従うと,本菌の完全世代は,子のう胞子の形態よりNectrian flammea(Tulasne)DINGLEYと同定され,分生胞子より見た不完全世代はFusariumz coccophilum (Desln.) Wollenw, & Reink.に所属する。
本菌の和名については,野村の言うカイガラムシ猩紅病菌が適当と考えられる。
本菌は,常発的に出現することから,微生物防除に利用する方向が考えられる。
本研究に当たり,分離菌株の分与と御助言を頂いた財団法人醗酵研究所の横山竜夫博士,文献の提供と御指導を頂いた京都大学の内田俊郎教授ならびに住友化学の藤本敬明氏に深く感謝する。

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