茶業研究報告
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あさつゆの自然突然変異体の生育と品質
青木 智
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1984 年 1984 巻 59 号 p. 1-6

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抄録

あさつゆから得られた自然突然突異体(AM)の生育,葉の形態,葉内成分などの諸特性を調べた。
AMの生育はさし木床では原品種より劣り,樹高はあさつゆの60~80%であったが,定植後には生育の差は小さくなった。
摘採期(一番茶)の新芽の諸特性をみると,新芽長と開葉数には差が見られなかったが,葉重と葉面積はそれぞれ,あさつゆの88%と91%(ともに平均値)であり,葉は小形であった。この差も成熟葉になると小さくなった。また,AMの出開度は低く,葉面積重は小さく,水分含量は高く保たれており,新芽熟度はあさつゆより若いことを示した。
葉緑素量をみると,一番茶の摘採期にはあさつゆの50%程度であり,成熟葉では90%であった。二番茶期葉では新芽でもあさつゆの80%程度の値を示した。
官能審査による香味特性は,香気,滋味ともあさつゆより優れていたが,水色は黄色味を帯びていた。
一番茶の新芽成分はあさつゆに対する相対値で示すと,タンニン,遊離アミノ酸,全窒素含量はそれぞれ,64.8~95,5%(平均82.4%),105.8~332.9%(153.0%),102.7~153.0%(111.4%)であった。しかし,アミノ酸組成には大差はみられなかった。カフェインは生育初期にはAMで多かった。
以上の結果から,AMの品質はあさつゆ以上に良質であったが,それは新芽熟度が若いことに起因している可能性があり,一方,一番茶の新芽生育はあさつゆより劣ることが明らかとなった。

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