茶業研究報告
Online ISSN : 1883-941X
Print ISSN : 0366-6190
ISSN-L : 0366-6190
茶園土壌における被覆尿素肥料の溶出とチャの吸収利用
志和 将一吉澤 喜代雄伊東 正智
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 2000 巻 88 号 p. 31-38

詳細
抄録

茶園土壌における被覆肥料の溶出特性と茶樹の吸収利用について明らかにするため,15Nで標識した被覆尿素120日タイプおよび40日タイプの2種を用いて時期別に被覆尿素の溶出率および茶樹の吸収量を調査した。被覆尿素120日タイプは8月下旬に,40日タイプは2月下旬に施用した。茶樹は'やぶきた'2年生苗を1/2000aワグネルポットに定植し,露地に地際部まで埋設して5ヶ月間均整栽培したものを供試した。
被覆尿素120日タイプは施肥当年の11月までに70%の窒素が溶出し,翌年8月までの1年間溶出が続いた。茶樹の吸収利用率は11月で20%と低かったが,その後も利用率は徐々に増加し翌年の8月の時点でも吸収が認められた。一方,被覆尿素40日タイプは5月の一番茶摘採期までに 50%の窒素が溶出し,7月の二番茶摘採期までの100日間溶出が続いた。茶樹の吸収利用率は一番茶摘採期で9%と低かったが,その後二番茶摘採期までの間で著しい吸収が認められ利用率が高まった。しかし,それ以降の吸収は認められなかった。
このように,被覆尿素は長期間の肥効を持続できるため,秋肥および夏肥の施肥回数,施肥量の削減が可能であると考えられた。しかし,被覆尿素は低地温期の肥効の確保が難しく,また,春肥窒素における一番茶芽への寄与が大きくその分配量も多いことから,被覆尿素の施用にあたっては春期に速効性のある窒素肥料との併用が必要であると考えられた。また,被覆尿素は根の肥やけが少ないため,うね間の根量が増加し肥効率が向上する可能性が示唆された。

著者関連情報
© 日本茶業技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top