茶業研究報告
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茶園における土壌バイオマスとその窒素の代謝回転速度
志和 将一吉澤 喜代雄丸本 卓哉
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2002 年 2002 巻 94 号 p. 29-36

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抄録

赤黄色土の茶園を供試して,牛糞堆肥連用,牛糞堆肥単年施用および有機物無施用土壌のバイオマス炭素および窒素とその代謝回転速度を測定した。併せて菜種油粕連用土壌を含め,土壌の理化学性および微生物数の変化,バイオマス炭素および窒素の年間変動を調査した。
牛糞堆肥連用5年目になると,牛糞堆肥連用土壌と有機物無施用土壌との間には有機態炭素量や陽イオン交換容量など明らかに理化学性の差がみられるようになった。希釈平板法によって検出した微生物数も牛糞堆肥連用土壌では,細菌,放線菌が大幅に増加していた。バイオマス炭素および窒素は,牛糞堆肥連用土壌が有機物無施用土壌に比ベバイオマス炭素で3~5倍,バイオマス窒素で2~8倍で推移し,菜種油粕連用土壌はその中間的な値で推移した。これらのことから,施用した可給態炭素量が微生物増殖の大きな制限要因となっていることが窺われた。
バイオマスが保持する窒素量を表層から深さ20cmで推定すると,牛糞堆肥連用6年目の土壌で10a当たり8.4kg,牛糞堆肥単年施用土壌で5.7kg,有機物無施用土壌で5.1kgとなった。また,これらの代謝回転速度はそれぞれ0.85年-1,0.66年-1,0.57年-1となり,年間に深さ20cmまでのバイオマスから供給される窒素量はそれぞれ10a当たり7.1kg,3.8kg,2.9kgと推定された。茶樹が年間に吸収する窒素を10a当たり30kg,そのうち地力窒素が15kgと仮定すると,牛糞堆肥連用土壌では茶樹が吸収した地力窒素の47%,総窒素量の24%がバイオマスに由来することになる。

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© 日本茶業技術協会
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