(1)製茶工程別無機元素含有量の変化について検討した。その結果, Ba, Cu, Fe, Ni, Znについては粗揉後に増加する傾向が見られた。反対に, Srは精揉後に減少する傾向が見られた。その他の金属(Al, Co, Mg, Mn,Rb)に関しては,変化は認められなかった。変化の認められた元素に関して,荒茶と生葉での無機元素含有量を比較したところ,5%水準でZnだけに有意な差が認められた。他の元素に関しては0.8~1.6倍まで変化していたが,3回の繰り返し変動(標準偏差)が大きく,統計的に有意な差があるとはいえなかった。Znと比較的増加の大きかったFeは,考慮して産地判別に用いる必要がある。
(2)葉位別無機元素含有量の変化について検討した。その結果, Al, Ba, Ca, Co, Mn, Srは下位の葉になるほど増加し,反対に, Cu, Fe, Mg, Ni, P, Znは減少したが,KとRbはほとんど変化しなかった。葉と比較して,茎では特異的な含有量を示す元素が多かったことから,茎茶は原産地判別試料として用いることはできない。