CHEMOTHERAPY
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抗菌剤の抗菌活性と臨床効果
西浦 常雄土井 達朗河田 幸道
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1979 年 27 巻 4 号 p. 669-674

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抄録

1. well controlled studyにより急性単純性膀胱炎にAmpicillinを投与量をかえて3日間投与し, 抗菌剤の臨床効果と薬剤感受性との関係を検討した. 2g/日, 1g/日, 0.5g/日, 0.2g/日の各投与群の細菌消失率はそれぞれ97%, 80%, 83%, 68%であった. 2g/日投与群の細菌消失率は他の投与群に比して有意差を認めた.
2. 検出菌の薬剤感受性分布から100μg/ml以下のMICの細菌を感性菌, 200μg/ml以上を耐性菌とした. 各投与群において感性株群では投与量による消失率の差は認められなかったが, 耐性株群では投与量に応じた消失率の低下が認められた.
3. 各群の尿路感染菌株の薬剤感受性累積百分率の細菌消失率に相当する点の阻止濃度を臨床有効濃度 (CEL) とすると, CELは, 2g/日, 1g/日, 0.5g/日, 0.2g/日の各投与群でそれぞれ1, 160μg/ml, 210μg/ml, 240μg/ml, 50μg/mlであった.
4. 自然治癒傾向が高く, 一般に抗菌剤の投与で原因菌の薬剤感受性に関係なく臨床効果がえられると思われている急性単純性膀胱炎でもやはり抗菌活性に比例して臨床効果がえられることを示した.
5.われわれが提唱した臨床有効濃度clinical effective level;CELの概念を紹介し, このものがin vitroの抗菌活性に対して薬剤の体内動態とhost側のすべての因子を含めたin vivoの抗菌活性ともいうべきものでその薬剤を, そのような対象疾患の患者へ, その投与量, 投与方法で投与した場合に, 感染菌が消失するか否か, すなわち臨床的な感性と耐性の限界値を表したもので, 実地診療上に有用なものであることと同時に, 抗菌剤の臨床効果を比較検討する上で有用であることを述べた.

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© 社団法人日本化学療法学会
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